練習問題を解いていきましょう。

銀イオンと亜鉛イオンを含む水溶液から、２つのイオンを分離したいと思います。
どのように考えればよいのでしょうか？
このような系統分離の問題においては、どちらか一方だけを沈殿させるのがポイントです。
その条件に合うのは、アとイのどちらでしょうか？
順番に見ていきましょう。

まずは、アです。
銀イオンに希塩酸を加えると、AgClの白色沈殿が生じます。
対して、亜鉛イオンに希塩酸を加えても反応は起こりません。
つまり、亜鉛イオンは、イオンとして水溶液中に残ります。

ということは、片方のイオンが沈殿になって、もう片方は水溶液中に残ったことになります。
分離成功ですね。

それでは、イの方もチェックしてみましょう。
塩基性下で硫化水素を加えると、どうなるでしょうか？

銀イオンは、液性にかかわらず、硫化物イオンと反応します。
その結果、硫化銀Ag₂Sの黒色沈殿を生じましたね。
一方、亜鉛イオンは、中性・塩基性下で、硫化物イオンと反応します。
このとき生じるのは、硫化亜鉛ZnSの白色沈殿を生じます。

ということは、両方のイオンが沈殿となってしまいます。
これでは、２つのイオンを分離したことにはなりませんね。
分離失敗です。

以上より、答えは、アとなります。

このように、片方のイオンだけを沈殿させるのが、とても重要な考え方でした。