ポイントの２つ目は「マリア＝テレジアの業績」です。
三十年戦争後のオーストリアでは、 マリア＝テレジア という女王が登場します。

彼女は数々のすばらしい業績を残し、現在でもオーストリア国民に愛されています。いったいどんな女王だったのでしょうか？

マリア＝テレジアは1740年に即位しました。彼女の父カール６世に 男性の王位継承者 がいなかったため、娘であるマリアが即位したのです。カール６世は女性でも帝位を継承できるように法令を制定しました。

しかし、女性が皇帝を務めることに対して周囲の国々が反発しました。マリアは即位と同時に戦争をすることになってしまったのです。この戦争を オーストリア継承戦争 といいます。

マリアの即位に反発したドイツ諸侯は、団結してオーストリアを攻撃しました。また、マリアは ハプスブルク家 の出身だったのですが、ハプスブルク家と犬猿の仲である フランス も参戦し、オーストリアを苦しめました。

オーストリア劣勢の中、1748年に アーヘン条約 が結ばれました。この条約で マリア＝テレジアのオーストリア継承権は承認されました。 しかし、オーストリアはプロイセンに対し シュレジエン 地方を割譲することになったのです。

シュレジエン地方は有名な 石炭と鉄の産地 です。人口も多く、この場所を奪われるのは非常に痛手でした。

マリアは考えました。シュレジエン地方は絶対に取り返したいですが、戦争を始めれば確実に フランス が介入してきます。フランスが介入すれば多勢に無勢、オーストリアが不利になるのは明らかです。

オーストリアの国益を重視した彼女は、ある決断をしました。 イタリア戦争以来、長年対立してきたフランスと和解することにしたのです。

15世紀末～16世紀にかけて行われたイタリア戦争以来、オーストリアとフランスは約200年間対立を続けていました。しかし、シュレジエン奪回を目指すオーストリアが接近したことで、ついに両国の対立関係が解消されたのです。これを 外交革命 といいます。

ちなみに、フランスと同盟関係を結ぶ際、マリアは人質として 自分の娘 をフランスに嫁がせました。その名も マリ＝アントワネット といいます。

フランスを味方につけたオーストリアに対し、両国の接近を警戒したプロイセンが宣戦布告しました。1756年、 七年戦争 の始まりです。

シュレジエン地方奪回を目指すオーストリアは、フランスや ロシア 、スウェーデンを味方につけ、有利に戦争を進めました。そしてついにプロイセンを追い詰めたのですが…

当時、オーストリアを支援した ロシア では 女性の皇帝 が即位していました。しかし彼女は1761年に急死してしまい、新たにピョートル３世という皇帝が即位しました。

実は、この新しい皇帝は プロイセン王フリードリヒ２世の大ファンだったのです。 ピョートル３世が即位したロシアはオーストリアを裏切り、プロイセンに味方しました。

ロシアの裏切りに加え、 フランスの敗北 もオーストリアには痛手でした。フランスは七年戦争と並行して戦っていた植民地戦争でイギリスに敗れ、多くの植民地を失うことになったのです。

ロシアの裏切りにフランスの敗北。結局オーストリアはプロイセンを倒すことができず、シュレジエン地方奪還に失敗してしまいました。

今回は、オーストリアの女帝 マリア＝テレジア に注目しました。彼女が戦った２つの戦争や、フランスとの関係を改善した「外交革命」について、しっかり復習しておきましょう。