コケ植物について、スギゴケを例に見ていきましょう。
コケ植物は、どのような一生を過ごしているのでしょうか。

次の図の、左にある写真を見てください。
これはスギゴケです。

コケ植物には、雄株と雌株があります。
雌株の先端に、何かがくっついているのが分かりますか？
この部分は特に胞子体とよばれます。
胞子体とは、胞子を形成する植物体のことです。

胞子体には胞子のうと呼ばれる袋のようなものがついています。
この中には、胞子のもとになる胞子母細胞が入っています。
胞子母細胞は、減数分裂をする直前の細胞で、核相は2nです。

雌株の胞子のうに含まれる胞子母細胞は、減数分裂、つまり2回の連続した分裂を行います。
すると、核相は半減し、4つの胞子が放出されます。
胞子とは、減数分裂によって生じる直後の細胞のことなのです。

この胞子が発芽し、さらに細胞分裂が進んでいくと、核相nの配偶体となります。
配偶体とは、配偶子あるいはそのもととなる細胞を有する組織のことです。

配偶体には雄と雌がいて、それぞれの先端部分に造精器と造卵器があります。
雄の配偶体はやがて雄株に、雌の配偶体はやがて雌株になります。
造精器は精子を、造卵器は卵をつくるところです。
精子や卵は配偶子とよばれます。つまり、受精、接合をする細胞ということです。

精子が卵に接合すると、受精卵が細胞分裂をくり返し、やがて新しい胞子体となります。
コケ植物の場合、核相が2nなのは胞子体だけです。
この胞子体は胞子母細胞をもっており、やがて減数分裂によって新しい胞子を放出するのです。

このような循環を、生活環といいます。

ちなみに、雌株は、配偶体の部分は光合成ができますが、先端の胞子体の部分は光合成ができません。
胞子体は、配偶体から養分をもらっているのです。
よって、胞子体は配偶体に寄生している、という表現をすることもできます。