イトヨの生得的行動について見ていきましょう。

イトヨという魚は、生殖に関する2つの生得的行動を示すことで知られています。
攻撃行動と繁殖行動です。
これらの行動は生得的行動なので、行動を引き起こすための鍵刺激があります。
それぞれ、何が鍵刺激となって行動が引き起こされるのでしょうか？

イトヨの攻撃行動を引き起こす鍵刺激は何なのか、実験してみましょう。
雄のイトヨにいくつかの模型を対面させ、攻撃行動を示すか観察します。

1つ目は、雄のイトヨと形が似ている模型です。
イトヨは、この模型に対して攻撃行動を起こしませんでした。
相手の形状が自分と似ていても、攻撃行動を起こす鍵刺激にはならないようです。

2つ目は、腹側が赤く雄のイトヨと形が似ている模型です。
イトヨは、この模型に対して攻撃行動を起こしました。
相手の体に赤い部分があることが、攻撃行動を起こす鍵刺激になっているのでしょうか？

3つ目は、背側が赤く雄のイトヨと形が似ている模型です。
イトヨは、この模型に対して攻撃行動を起こしませんでした。
ここまでの実験で、相手の腹側の赤みが攻撃行動を起こす鍵刺激なのではないかという予想がつきますね。

さらにもう一つ実験して確認してみましょう。
4つ目は、腹側が赤く雄のイトヨとは形が全く異なる模型です。
イトヨは、この模型に対して攻撃行動を起こしました。
つまり、 雄のイトヨの攻撃行動の鍵刺激は、相手の腹側の赤みなのですね。

やがて雄のイトヨは雌のイトヨにアプローチをしていきます。
イトヨの繁殖行動を引き起こす鍵刺激は何なのでしょうか？

実は、雄のイトヨの繁殖行動の鍵刺激は、雌の腹側の膨らみです。
お腹に卵を蓄えている雌に出会うと、雄はジグザグダンスというダンスを始めます。
次に、雄のジグザグダンスが鍵刺激となって、雌は雄を追従するようになります。
さらに、雌の追従が鍵刺激となって、雄は雌を自分の巣に誘導し始めます。

雌が巣に入ると、雄は雌をつつきます。
すると、つつかれたことが鍵刺激となって、雌は巣の中で放卵し、巣から出て行きます。
最後に、雄が巣の中に入り、卵に放精をして受精が完了します。
ここまでの一連の流れが、イトヨの繁殖行動なのです。

イトヨの一連の繁殖行動は、連鎖的に発現していることに気づきましたか？
1個前の行動が、次の相手の行動の鍵刺激となっているのですね。

イトヨの生得的行動についておさえましょう。