中1理科

溶解度・溶解度曲線とは ~計算問題の解き方、グラフの読み取り方~

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この記事は、 「溶解度や溶解度曲線の計算問題の解き方がわからない」という人に向けて解説 します。
溶解度に関する計算問題はニガテな人も多いですが、コツをつかめば簡単に解くことができるのです。
定期テストや入試にもよく出題されるテーマなので、問題を解きながら、わかりやすく解説していきます。

1. ポイント

みなさんは水溶液の計算問題などで、次のようなグラフを見たことがありませんか?

溶解度曲線のグラフ、硝酸カリウムと塩化ナトリウム

このようなグラフを、 溶解度曲線 といいます。
溶解度曲線をひとことで表すと、 「溶解度と温度の関係を表したグラフ」 となります。

しかし、これだけを知っていても、計算問題は解けませんよね。
溶解度曲線の読み取り方や計算のコツを理解して、実際の問題にチャレンジしてみましょう。

2. 飽和水溶液とは

みなさんは、食塩を水に溶かして、食塩水をつくったことはありますか?

食塩水、ビーカー、水溶液

この場合の食塩水のように、物質を水に溶かしたものを、 水溶液 といいましたね。
このとき、最初のうちは、食塩はすべて水に溶けていきます。
しかし、食塩の量をどんどん増やしていくと、やがて食塩が溶け残るようになります。

つまり、 水に溶かすことができる物質の量には限界がある わけです。
このように、物質を限界まで溶かした水溶液を、 飽和水溶液 といいます。
一番濃い水溶液というようなイメージですね。

ココが大事!

飽和水溶液とは、物質を限界まで溶かした水溶液

映像授業による解説

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3. 溶解度とは

物質を水に溶かすとき、溶ける量には限界があります。
その量を数字で表すのが、 溶解度 という考え方です。
そして、中学理科では、このときの水の質量が100gと決まっています。
つまり、溶解度とは、 100gの水に溶ける物質の質量 なのです。

たとえば、20℃の水100gには、35.8gまで食塩が溶けます。
このことを、「(20℃の水100gに対する) 食塩の溶解度は35.8 」と表します。
ちなみに、この場合、食塩は溶質、水は溶媒ということになりますね。

ココが大事!

溶解度とは、100gの水に溶ける物質の質量

映像授業による解説

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4. 溶解度と温度の関係

先ほどの例では、「(20℃の水100gに対する)食塩の溶解度は35.8」と紹介しました。
「20℃」と「100g」という2つの条件がついていますね。

「100g」は、 質量 に関する条件です。
溶解度は、通常は100gの水に溶ける量で表すと紹介しましたね。

「20℃」は、 温度 に関する条件です。
実は、溶解度は、 温度によって大きく変化する場合がある のです。

次の表は、硝酸カリウムという物質の溶解度を表したものです。

溶解度の表、塩化ナトリウム、硝酸カリウム

表の左側ほど温度が低く、右側ほど温度が高くなっていますね。
そして、右にいくほど、溶解度が大きくなっていきます。
つまり、温度が高くなるほど、溶解度が大きくなることがわかりますね。

ココが大事!

温度が高くなるほど、溶解度が大きくなる

映像授業による解説

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5. 溶解度の一覧・単位

溶解度の大きさは物質ごとに違っています。一覧にすると、次のようになります。

溶解度の表、塩化ナトリウム、硝酸カリウム

また、中学校の理科では、 溶解度には単位をつけません。
溶解度は、「水100gに食塩が何g溶けるか」というように、gとgの単なる割合を表しているわけです。
ただし、水100gに溶かしていることをわかりやすくするために、「g/水100g」という単位で表される場合もあります。

6. 溶解度の計算

溶解度には公式といえるようなものはありませんが、次のような方法で簡単に計算できます。

たとえば、20℃の水100gに、35.8gまで食塩が溶けたとしましょう。
「(20℃の水100gに対する)水の溶解度は35.8」ということになりますね。
それでは、200gの水には、何gの食塩が溶けるでしょうか?

考え方は簡単です。
水の量が2倍 になっているので、 溶ける食塩の量も2倍 にしてみましょう。
35.8g×2=71.6gより、 71.6gまで溶けると分かります。
もし、 水の量が3倍 になっていれば、 溶ける食塩の量も3倍 になります。
35.8g×3=107.4gより、107.4gまで溶けることになります。
数学の考え方でいうと、水の量と溶ける食塩の量は、 比例の関係 になっているわけです。

このように、溶解度に関する計算問題では、 「水の量が100gの○倍のとき、溶ける食塩の量は溶解度の○倍」 と考えればよいのです。
注意しなければならないのは、 同じ温度の水に注目 することです。
「20℃の水」と「80℃の水」では、場合によって溶解度に大きな差があるのでしたね。

ココが大事!

水の量が100gの○倍のとき、溶ける食塩の量は溶解度の○倍

映像授業による解説

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7. 溶解度曲線のグラフ

溶解度は、次のようなグラフで表す場合があります。
このグラフは、どのように読み取ればよいでしょうか?

溶解度曲線のグラフ、塩化ナトリウム、硝酸カリウム

まずは、グラフに書かれている情報を整理しましょう。
横軸は、 水の温度 ですね。
縦軸は、100gの水に溶ける物質の質量、つまり 溶解度 です。
そして、図には、2つの曲線がありますね。
このように、水の温度と溶解度の関係を表したグラフを、 溶解度曲線 といいます。
塩化ナトリウム(食塩)と硝酸カリウム のそれぞれについて、溶解度曲線があるわけですね。

溶解度曲線のグラフ、塩化ナトリウム、硝酸カリウム

2つの曲線に注目してみましょう。
温度が高くなるほど、溶解度が大きくなる ということは共通していますね。

硝酸カリウムは温度が上がると、溶解度が急激に上がっていますね。
しかし、塩化ナトリウムの場合、変化はあまり大きくありません。
このように、 物質の種類によって、溶解度の変化のしかたは異なる ことになります。

ココが大事!

溶解度曲線は、水の温度と溶解度の関係を表したグラフ

映像授業による解説

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8. 溶解度曲線の計算

実際のテストでは、溶解度曲線の問題は、どのように出題されるのでしょうか?
次のグラフを用いて、40℃の水200gに溶ける硝酸カリウムの質量は何gか 求めてみましょう。

溶解度曲線のグラフ、塩化ナトリウム、硝酸カリウム

このときのポイントは、2つです。
① 「水の温度」と「溶解度曲線」の交点を見つける
② 水の質量に合わせて、溶解度を○倍する

それでは実際に考えてみましょう。
まずは、①です。
横軸の「水の温度」のうち、 「40℃」 を見つけましょう。
そこから上の方に見ていくと、硝酸カリウムの溶解度曲線と交わりますね。
縦軸を見てみると、ちょうど 「60g」 のあたりです。
このことから、「(40℃の水100gに対する) 硝酸カリウムの溶解度は60 」だとわかります。

次に、②です。
今回の水の質量は200gです。
つまり、 水100gの2倍 になっているわけですね。
それならば、 硝酸カリウムの質量も2倍 して、60×2=120となります。

以上のように、40℃の水200gに溶ける硝酸カリウムの質量は、 120g と求めることができました。

ココが大事!

① 「水の温度」と「溶解度曲線」の交点を見つける

② 水の質量に合わせて、溶解度を○倍する

ちなみに、この方法を利用すると、硝酸カリウム水溶液から硝酸カリウムの固体を得ることもできます。
この方法を、 再結晶 といいます。

映像授業による解説

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9. 【問題と解説】 溶解度曲線の計算

みなさんは、溶解度について理解することができましたか?
最後に簡単な問題を解いて、知識を確認しましょう。

問題

次の図を用いて、あとの問いに答えよ。

溶解度曲線のグラフ、塩化ナトリウム、硝酸カリウム

(1) 40℃の水100gに溶ける質量は、食塩と硝酸カリウムのどちらの方が大きいか答えよ。
(2) 45℃の水400gには、何gの硝酸カリウムが溶けるか答えよ。

解説

(1)は、2つの物質の溶解度を比較する問題です。
グラフから読み取ってみましょう。
最初に注目するのは、グラフの横軸です。
水の温度が「40℃」になっているところを探しましょう。
この温度では、塩化ナトリウムよりも、硝酸カリウムの方が上にありますね。
つまり、40℃の水100gに溶ける質量は、硝酸カリウムの方が大きいということになります。

(答え) 硝酸カリウム

(2)は、45℃の水400gに溶ける硝酸カリウムの質量を答える問題です。
そのためには、2つのポイントがありましたね。

① 「水の温度」と「溶解度曲線」の交点を見つける
横軸で「45℃」のところを見つけ、硝酸カリウムの曲線との交点を見つけましょう。
このときの溶解度は、「70」になっています。

② 水の質量に合わせて、溶解度を○倍する
今回は、水400gなので、100gの4倍ですね。
ということは、水に溶ける硝酸カリウムの質量も4倍にして、70×4=280です。

(答え) 280g

10. Try ITの映像授業と解説記事

「飽和水溶液と溶解度」について詳しく知りたい方はこちら

「溶解度曲線と再結晶」について詳しく知りたい方はこちら